大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和24年(れ)2224号 判決 1949年12月13日

主文

原判決を破棄する。

本件を福岡高等裁判所宮崎支部に差戻す。

理由

被告人の上告趣意は末尾添附別紙記載の通りでこれに対する当裁判所の判断は次の如くである。

原判決は主文において押收にかかる漁船明漁丸(証第一号)の没收を言渡しその理由として該漁船は本件犯罪行為に供した船舶であって被告人が本件犯行当時船長としてこれを占有していものと認めるから昭和二一年勅令第二二七号第九條第一項によってこれを没收する旨を説示している。即ち原判決は本件犯罪時における該漁船の占有関係を基準として同漁船を没收する理由としている。然し前記勅令第九條第一項は「第一條の犯罪に係る物品又は同條の犯罪行為に供した船舶で犯人の所有し又は占有しているものはこれを没收する」と規定し次いで第二項には「犯人以外の者が犯罪の後前項の物を取得した場合にその取得の当時善意であったと認められないときはその物を没收する」と規定していることに鑑みれば寧ろ没收の裁判言渡当時を基準として本件漁船に対する占有関係を判断すべきものと解せられる。然らば原判決が犯罪時において前記漁船が被告人の占有に属していたことを説示するのみでは果して裁判時においても依然被告人がこれを占有していたものか或は本件犯罪後該漁船を善意で取得した者があるか否か原判決自体からこれを知ることが出來ない。從って原判決には敍上の点についていまだその審理を盡していない違法があると言わなければならない。しかもその違法は判決に影響を及ぼさないとは限らないから原判決は破棄を免れない。

よって上告は理由があるから旧刑訴第四四七條第四四八條の二によって主文の如く判決する。

以上は当小法廷裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例